オーダメイドの家具屋から新築住宅のデザインまで手がけるようになったと言うと驚かれますが、ものづくりの視点からするとそれは理にかなっています。例えば家具を一つ作るとして、デザインにそのお客さんの好きなもの、部屋の雰囲気、将来の希望などを考え組み込んでいきます。そこに暮らし方や予算などを考えて、使いやすい材質、仕上げ方などを選びます。これはある意味で暮らしの設計図です。それがお家やお店づくりになっても、同じように機能します。その上、家具はもともと生活に密着しているので空間が大きくなってもデザイン性だけで使いにくいなど、頭で考えたものと実際の手触りにズレがありません。家具は意外に万能です。
家具から空間を作るKITORIならではの空間作りは、すごく変わっていたり斬新なデザインを求めるのではなく、ごく自然に美しく使いやすく、ずっと好きでいることのできるものを基準としています。良いダイニングテーブルを作れば、3代引き継いでもそれほど違和感なく使い続けられます、それは自然に美しく機能性のあるものを考えると答えが決まってくるからです。家づくりもそのようにあれば良いと思います。流行り廃りに影響されず、3代でも使い続けられる夢の色褪せないものを。
KITORIのはじまりである「家具工房木とり」は18年前立川のアーティストが集まる倉庫の一角に工房を開きました。ここで5000人も来場者のあるアートイベントを立ち上げたこともあり、アート関係の仕事が多くなりました。アートと言っても定義はいろいろあると思います。コンセプト重視で非現実的なもののみをアートと呼ぶ方もいますが、KITORIで考えるアートはもっとごく自然に美しい基準であり、現実を超えることのできる力を持ったある種の魔法です。
例えばキラキラ光る河が流れ、建築物の色が統一され、夕陽の沈むパリの街並みを美しいなと思う感覚。絵や作品に関していえば、「幸せになるもの」「生きているもの」「魂があるもの」。それらは現実に旅行に出るような風穴を日常に開けてくれます。空間デザインの場合様々な制約がありますが、どんな空間でもその基準があることで間違ったものを作ることがないのがアートの利点です。
KITORIははじめから空間デザインをしていたのではなく、家具に付随して少しずつ依頼が増え、規模もどんどん大きくなっていったので、新しいことを受ける度にたくさんの人に出会い、教えられたり、助けられたり試行錯誤しながら進んできました。そのおかげで同じ感覚で空間づくりができるいろいろな業種の職人さん、作家さん、アーティストなどと出会い、良いチームを組んで仕事をすることができるようになりました。現場ごとにチームを編成することでどのような種類の仕事を受けても対応が可能です。例えば店舗づくりでオープニングパーティの準備から、看板やロゴデザイン、植栽など頼まれても一括して受けることができます。ワンストップで受けることできるので話が早く、デザインにブレがなく質も良くコストも下がります。
この家の施主さんは、新築住宅を立てようと考えたとき、建築家さんに格好のいい家を建ててもらっても、その後どんな家具を暮らしていいのかわからないので、家具屋さんに家具を含めて考えてもらってはどうかと。kitoriに頼んでくれました。そのような悩みは実際多いと思います。家具というのは建物以上に生活を左右するので、合わせて考えるのは理にかなっています。家具を合わせることで、暮らしてから物が溢れたり、足りない物を急いで買って失敗することがなく、最初の快適さが続きます。
アイデアやデザインを提案し、打ち合わせを重ね、模型を作り、施工計画をし、施工してくれる業者さんと(よく知っている大工さん)打ち合わせしながら全体の品質管理をしつつ、家具や建具、最後の仕上げはKitoriで行って完成する流れです。
ご希望として奥様が将来お菓子屋さんや料理教室をしたいとの希望があったので、それに合わせてレイアウトや保健所対策など、将来的なことを考えて作っています。一部、物置の壁や庭の水洗などは施主さん家族が漆喰を塗ったりタイルを貼ったりしています。その場合はkitoriのスタッフが道具を用意して、施工指導をします。庭の壁の材木も製材所まで子供達もみんなで見に行きました。このような小さなことが時間に負けない、印象が劣化しない家を作ります。
例えば窓の少ない高気密性、ケミカルで丈夫な材質など、進化しているけれど人の生活を冷たくするものではなく、少しでも扉を開けるたびわくわくする家づくりをしていきたいと思います。
暮らしの中には物語があります。好きなものを探っていくと、夢の風景があります。時に懐かしく、時に夜空の星を見るようにはっとする広い景色が見えます。
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